○日雇労働者についての労働者派遣の禁止とその例外

夏フェス、スポーツイベントなど、短期間の催しが多く開催される季節となりました。こういったイベントを運営するには当然多くのスタッフを必要としますので、その期間限定で人材を確保したい運営側企業のニーズがあるかと思います。また、労働者側にも短期間限定で働くことを希望するケースもあるかと思います。

 

イベント運営に限らず、製造業、店舗等での物品販売など、日々または短期で人材を確保したい企業や働きたい人が一定数存在していることが現状ではないでしょうか。しかし現在、労働者派遣という形態での日雇労働は原則禁止されています。

今回のコラムでは、日雇労働者についての労働者派遣について、その禁止の範囲や例外などについて取り上げたいと思います。

 

 

(1)日雇派遣の原則禁止に至る主な経緯

日雇派遣が原則禁止となる前、そのような働き方がどのくらいあったのかを知ることができる、厚生労働省が平成19年に行った調査があります。

 

その調査は派遣労働者のうち、1日単位の雇用契約で働く者等を「日雇派遣労働者」とし、1 ヶ月未満の雇用契約で働く者を「短期派遣労働者」として、派遣元事業主を通じて、その実態を把握すること等を目的として行われました。

その結果、調査対象10社における1日あたりの平均派遣労働者数は次のとおりでした。

 

 


 

このように当時は、そもそも労働者派遣が禁止される業務以外は、日雇派遣に関する規制がなかったため、広く行われていました。

 

しかし、ちょうどこの頃、平成19年~平成20年頃に不適正な日雇派遣問題が社会問題化します。そこで、厚生労働大臣等の諮問機関である労働政策審議会は「日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者について、原則、労働者派遣を行ってはならないものとすることが適当である。その場合、日雇派遣が常態であり、かつ、労働者の保護に問題ない業務等について、政令によりポジティブリスト化して認めることが適当である。(平成20年9月24日労働政策審議会建議 抄)」との結論を出し、厚生労働大臣に建議を行いました。

 

そして、平成24年の労働者派遣法の改正により、日雇派遣の原則禁止が規定されるに至りました。

 

 

(2)禁止の範囲

日雇労働者の定義:日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者

禁止されるのは、派遣元事業主が上記の定義にあてはまる労働者を派遣することです。

 

よく誤解されるのは、労働者派遣契約との混同です。

労働者派遣契約とは、労働者派遣を行う事業者(派遣元)と労働者を受け入れる事業者(派遣先)とが結ぶ契約のことで、派遣元事業主と労働者が結ぶ労働契約とは異なります。

 

 

労働契約の期間が31日以上あれば、労働者派遣契約の期間が30日以内であったとしても、日雇派遣の禁止に違反するものではありません。

ただし、社会通念上明らかに適当とはいえない労働契約については、日雇派遣の禁止の適用を免れることを目的とした行為と解されますのでご注意ください。

 

例えば、雇用期間が31日以上の労働契約を締結しているにもかかわらず、その期間の就労日数が1日しかない。もしくは契約期間中の初日と最終日しか就労日数がないといった場合には、「社会通念上明らかに適当とはいえない」といえます。

 

 

(3)日雇派遣の禁止の例外

以上のように日雇派遣は原則禁止されたわけですが、実は例外があり、次の場合には認められています。

 

①日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務(日雇派遣の例外業務)について派遣する場合

 

具体的には、労働者派遣法施行令第4条第1項各号に掲げる次の業務に派遣する場合は、日雇派遣が可能となります。

 

・情報処理システム開発関係(令第4条第1項第1号)

・機械設計関係(同第2号)

・機器操作関係(同第3号)

・通訳、翻訳、速記関係(同第4号)

・秘書関係(同第5号)

・ファイリング関係(同第6号)

・調査関係(同第7号)

・財務関係(同第8号)

・貿易関係(同第9号)

・デモンストレーション関係(同第10号)

・添乗関係(同第11号)

・受付・案内関係(同第12号)

・研究開発関係(同第13号)

・事業の実施体制の企画・立案関係(同第14号)

・書籍等の制作・編集関係(同第15号)

・広告デザイン関係(同第16号)

・OAインストラクション関係(同第17号)

・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業関係(同第18号)

・看護業務関係(同第19号)

 

以上の業務に該当し、日雇労働者派遣を行う場合には、「労働者派遣契約」「派遣労働者への就業条件明示書」「派遣元管理台帳」「派遣先管理台帳」の所定の欄に、該当する業務の条・項・号番号を記載する必要があります。

 

②雇用機会の確保が特に困難と認められる労働者の雇用継続等を図るために必要であると認められる場合

 

具体的には次のいずれかに該当する場合です。

 

(ア)60歳以上である場合

60歳以上(数え年ではありません)の人は、日雇派遣が可能です。

 

(イ)雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる昼間学生)である場合

昼間学生とは、昼間は学校に通い、夜だけアルバイトとして働いている人のことです。この場合は、日雇派遣が可能となります。

ただし、次のいずれかに該当する場合には、昼間学生にはなりませんので、日雇派遣の例外とはなりません。

・定時制の課程に在学する人(大学の夜間学部、高等学校の夜間など)

・通信制の課程に在学する人

・卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定の人(在学中に内定を受け、その内定先で働いている人)

・現在、休学中の人

・事業主の命により(雇用関係を存続したまま)大学院等に在学する人(社会人大学生など)

・その他一定の出席日数を課程終了の要件としない学校の在学者で、当該事業において同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められる人

 

(ウ)副業として日雇派遣に従事する人で、生業収入が500万円以上である場合

「生業収入」とは主たる業務の収入のことで、日雇労働者が複数の業務を兼務している場合は、その収入額が最も高い業務が主たる業務となります。

なお、使用者から労働の対価として支払われるものに限られず、例えば、不動産の運用収入やトレーディング収入(株式売買、投資信託などによる収入)なども含まれます。

 

(エ)主たる生計者以外の人が日雇派遣の対象となる場合であって、世帯収入が500万円以上である場合

「主たる生計者以外」とは、主として生計を一にする配偶者その他の親族の収入により生計を維持していることで、世帯全体の収入に占める収入の割合が50%未満であることをいいます。

なお「配偶者」には、事実婚である場合も含みます。

「世帯収入」には、日雇派遣労働者自身の収入も含まれます。また、(ウ)同様に使用者から労働の対価として支払われるものに限られず、例えば、不動産の運用収入やトレーディング収入(株式売買、投資信託などによる収入)なども含まれます。

 

(4)日雇派遣の要件の確認方法

日雇派遣の例外要件に該当するかどうかの確認は、各要件に合わせて次の書類により確認しなければなりません。

 

(ア)60歳以上である場合

⇒年齢が確認できる公的書類(住民票等)

 

(イ)昼間学生

⇒学生証等

 

(ウ)副業として従事、生業収入500万円以上

⇒日雇派遣労働者本人や、その配偶者等の所得証明書等の写し

 

(エ)主たる生計者以外で、世帯収入500万円以上

⇒日雇派遣労働者本人や、その配偶者等の所得証明書等の写し

配偶者等と生計を一にしていることを確認できる公的書類(住民票等)

 

以上を基本としますが、合理的な理由によりこれらの書類が用意できない場合は、やむを得ない措置として日雇労働者本人からの申告(誓約書の提出)によることにしても差し支えありません。しかし、本人に公的書類等の提出・提示を求めず、合理的な理由がないにもかかわらず、誓約書の提出に代えるように誘導することは不適切といえます。

 

なお、収入要件は前年の収入により確認しますが、前年の収入が500万円以上であっても、当年の収入が500万円を下回ることが明らかとなった場合は、日雇派遣禁止の例外とは認められません。

また、派遣元事業主は、要件の確認に用いた書類を保存しておく必要はありませんが、例えば派遣元管理台帳に記録を残しておくなど、どのような書類等で要件の確認を行ったかを分かるようにしておく必要があります。

 

以上、今回は日雇労働者についての労働者派遣の禁止について取り上げました。原則はあくまで禁止ですので、日雇派遣を行う場合は要件確認をしっかり行い、労働者本人、派遣先とも情報を共有して慎重に進めるようにお願いいたします。

 

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