「派遣労働者の不合理な待遇差の解消に係る調査結果報告書」について
令和5年3月に「令和4年度派遣労働者の不合理な待遇差の解消に係る調査研究事業 調査結果報告書」(厚生労働省委託事業、PwC コンサルティング合同会社)が公表されました。
令和4年度派遣労働者の不合理な待遇差の解消に係る調査研究事業調査結果報告書
働き方改革関係法の施行に伴い令和2年4月から施行された改正派遣法では派遣労働者と正規労働者の不合理な待遇差が禁止されましたが、同法では「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」こととされており、この点を踏まえて派遣労働者の待遇の改善状況などについて調査が取りまとめられたのが、今回の報告書となります。
全316ページのボリュームであり、短時間で全体を把握するのは困難といえますが、派遣元、派遣先、派遣労働者を対象としたアンケート調査と、派遣元、派遣先を対象としたヒアリング調査の結果の詳細がまとめられていますので、全体の傾向をつかむだけでも十分に価値がある内容だといえます。報告書の具体的な内容(目次)は、以下となっています。
2. 調査企画委員会の運営
2.1. 目的
2.2. 委員構成
2.3. 開催スケジュールと主な議題
3. 派遣元・先・労働者に対するアンケート調査及びヒアリング調査の概要
3.1. 調査概要
3.1.1. アンケート調査実施概要
3.1.2. ヒアリング調査実施概要
4. 調査結果の詳細
4.1. どのように待遇決定方式は選択されているか
ヒアリング結果
4.2. 各待遇はどの程度改善されたか
4.2.1. 単純集計結果
(ア) 派遣元事業所調査
(イ) 派遣先事業所調査
(ウ) 派遣労働者
4.2.2. 各待遇はどの程度改善されたか(属性別集計結果)
(ア) 派遣元事業所調査
(イ) 派遣先事業所調査
(ウ) 派遣労働者調査
ヒアリング結果
4.3. どのように評価は実施され、待遇に反映されているのか
(ア) 派遣元事業所調査
(イ) 派遣先事業所調査
(ウ) 派遣労働者調査
ヒアリング結果
4.4. どのように待遇は説明されているか
(ア) 派遣元事業所調査
(イ) 派遣先事業所調査
(ウ) 派遣労働者調査
ヒアリング結果
5. 総括~調査結果のまとめ
アンケート調査結果については、 ①どのように待遇決定方式は選択されているか、②各待遇はどの程度改善されたか、③どのように評価は実施され、待遇に反映されているか、④どのように待遇は説明されているか、の4点にまとめて詳細が記述されています。①については、派遣待遇決定方式は、87.6%が「労使協定方式」、8.9%が「派遣先均等・均衡方式」であるとされ、労使協定方式を選択した理由の最多は、「派遣先に左右されない待遇に設定できるから」(54.1%)、派遣先均等・均衡方式は「長年にわたり取引を行っている派遣先であり、必要な情報は把握しているから」(56.3%)とされています。
②については、11%以上の事業所が「新設した」「待遇の内容を引き上げた」とし、53.3%の事業所で「賃金が上がった」とし回答しています。③については、86.6%の派遣元では派遣労働者の評価を行っているものの、7.7%の事業所では行っておらず、④については、改正派遣法をきっかけに、派遣先と派遣料金の見直しについて「交渉した」事業所は57.3%、「交渉していない」事業所は37.2%、「交渉した」事業所のうち、75.9%で派遣料金が上がったとした一方で、22.9%の事業所が「変化していない」と回答しています。それぞれの調査結果について膨大なデータが網羅されていますので、ぜひ今後の派遣労働者の待遇決定などを見据える上での参考にしていきたいものです。