令和5年度一般賃金について
8月26日に「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」令和5年度版が厚生労働省から公表されました。
「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」(以下、「一般賃金」)は、派遣元が「労使協定方式」を採用する際に、派遣労働者の賃金の基準とするべきものです。
今回の通知は、令和5年4月1日から令和6年3月31日までの労使協定に適用されるものですが、それより前に適用することもできます。
ただし、適用日より前に今回通知の一般賃金額を適用することで、賃金を引き下げるような処置は、「不利益変更」になりますので注意が必要です。
また、賃金を引き下げることを目的に、一部の職種のみ今回通知の一般賃金額を適用日より前に適用することは、法の趣旨に反するため認められません。
昨年度との相違点を中心に、簡単にみていきます。
①一般基本給・賞与等の額
これまで同様、次の2つの統計を基にした数値から選択します。
(1)令和2年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)
(2)職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)
※独自統計を利用する選択肢もあります。
実務上、(2)を採用しているケースが圧倒的に多いため、
こちらの全産業平均を比較してみます。
○職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)
職業計
( )内は、令和4年度適用分の数値です。 (単位:円)
派遣事業と無関係な職種も含んでの平均ですので、あくまで参考ですが、今回は軒並み、数値が上昇しています。
前回分は、0年のみ金額が上がり、以降は下降傾向にありましたが、今回は次にみる「能力・経験調整指数」との兼ね合いで、金額が上がりました。
②能力・経験調整指数
( )内は、令和4年度適用分の数値です。
勤続0年を100として、能力と経験を年数別に算出した指数になります。
賃金構造基本統計調査の特別集計により算出した、勤続年数別の所定内給与(産業計)に賞与を加味した額により算出した指数になります。
(※実際の勤務年数をそのまま適用するわけではなく、実際の業務内容が何年目に該当するかを個別に判断して、決定されるものです。)
令和4年度は、上昇率がやや緩やかになりましたが、今回、3年目までについては、ほぼ一昨年度と同水準。上昇率が上がりました。
そのぶん、一般賃金の1年目以降の上昇につながっています。
③退職金
一般賃金に上乗せして先払いすることにより、一般の労働者の退職金に相当する額と「同等以上」を確保する場合の割合 ⇒ 5%
初回の通知から、6%で推移してきましたが、今回初めて変更され5%となりました。
※なお、前回通知では、74円から71円となった通勤手当の額は、今回は据え置きで、71円と変更はありませんでした。
労使協定方式に関するQ&A(第6集)
令和5年適用分の一般賃金公表と同時に今回は、「労使協定方式に関するQ&A(第6集)」も掲載されました。
問4-5
一般退職金について、一般基本給・賞与等の6%を上乗せして支給する方法を選択した場合にも、退職金制度を導入する場合と同様に、3年目以降の者のみ対象とすることは可能か。
※一般退職金の率は令和4年度適用の局長通達の例。
答 認められない。
この問いに関連して、3年目以降の者のみ対象することとして、その率を6%ではなく、1,2年目の分を上乗せする形(例えば12%など)にしてもダメかという問合せを受けましたが、答えは「認められない」です。
有効期限を1年としている場合は、もちろん、2年としている場合でも、数値の比較、見直し、検討は必要となります。
今回特に、派遣料金の交渉が必要になるケースも多いと考えられますので、なるべく早い時期からの準備をおすすめします。