日雇派遣の原則禁止の例外要件確認に関する取扱いについて
昨年の労働者派遣法の改正内容である日雇派遣の原則禁止に関する取り扱いについて、実務上の規制が強まってきています。
4月30日には、厚生労働省から都道府県労働局に対して「日雇派遣の原則禁止の例外要件確認に関する取扱いについて」の通達が出されています。
(厚生労働省2014/4/30日付 職派需発0430第8号)
通達の内容とそれへの対策を以下に簡単にまとめます。
1 問題の背景
日雇派遣原則禁止の例外要件は、日雇派遣の対象になろうとする者が、
①60歳以上である場合、
②学校教育法に規定する学校の学生又は生徒である場合、
③生業収入の額が500万円以上である場合、
④主として生計を一にする配偶者その他の親族の収入により生計を維持し、世帯収入が500万円以上の場合、
のいずれかに該当する必要があります。
住民票、健康保険証、所得証明書、源泉徴収票の写し等の公的書類等によって確認することを基本としていますが、合理的な理由によりこれらの書類が用意できない場合や、これらの書類のみでは判断できない場合は、本人からの誓約書の提出等によることも認められています。
生業収入または世帯収入が500万円以上であることの確認は、公的書類等による確認を十分に行うことなく本人からの誓約書やウェブサイト上の同意文書等によって、公的書類等による確認の代替としている派遣元も少なくありません。
今後は安易に誓約書による方法で済ませることのないよう、注意していく必要があります。
2 対象者が公的書類等を用意できないと主張する場合の取扱い
(1)合理的な理由の考え方
合理的な理由により公的書類等が用意できない場合等には、誓約書の提出によることとしても差し支えないありませんが、合理的な理由とは、「本人は公的書類等を用意する意思があるにもかかわらず、他律的要因により用意できない場合」をいい、「単に公的書類等を提出・提示したくないという本人の主観的理由のみ」では、当てはまりません。
(2)対象者が「プライバシー」を主張する場合の考え方
対象者が単に「プライバシー」を主張して公的書類等による確認を省略することは不適切であり、そのような場合には、(1)の考え方に即して「合理的な理由」に当たるか否かを確認することになります。その結果、単に「公的書類等を提出・提示したくない」という主観的理由のみを主張する者には、派遣元から重ねて提出・提示を求める必要があります。
3 対象者が誓約書を提出することとなる場合の取扱い
(1)日雇派遣原則禁止の趣旨
日雇派遣原則禁止の趣旨は、「日雇派遣は、例外的に認められる要件に該当する場合を除いては行ってはならない」ことにあるので、対象者が例外要件に該当することの確認が取れないまま、日雇派遣を行うことは法令違反のおそれがあります。
従って、派遣元においては、まずは対象者に公的書類等の提出・提示を求めるとともに、対象者に公的書類等を用意できない合理的理由があり、やむを得ず誓約書を提出する場合には、例外要件のいずれの類型にどのように該当するのかを具体的に聴取し、確認する必要があります。
なお、対象者が派遣元に対して公的書類等を提出・提示せず、誓約書を提出することとなった場合でも、職業安定機関の職員から対象者に係る公的書類等の確認を行うケースもありえます。
今後は極力、誓約書の提出等による方法のみ依存することは差し控えていくべきです。
(2)誓約書の提出による場合の取扱い
上記2及び3(1)を踏まえ、派遣元が行うべき具体的な確認方法は次のとおりです。
①まずは対象者に対して、公的書類等の提出・提示を求める。
②対象者が公的書類等を提出・提示できないと主張する場合は、その理由を具体的に聴取し、合理的な理由に当たるか否かを確認する。その際、対象者が主張する理由が単に「プライバシー」のみでは不十分であり、その場合の取扱いは上記2(2)のとおり。
③聴取の結果、誓約書の提出によると判断した場合は、日雇派遣原則禁止の例外要件のいずれの類型にどのように該当するのかを具体的に聴取し、確認する。
④聴取の後は、「聴取の記録」を誓約書等とともに保管する。
今後は本人からの「聴取」の手続き及びその記録を保管することが、コンプライアンス上も重要になってきます。
4 公的書類等又は誓約書及び誓約書によることとなった理由の記録の取扱い
日雇派遣原則禁止の例外要件に該当する者であることは公的書類等により確認するのが原則ですが(上記1)、その際、必ずしも公的書類等の原本や写し等を控えなくてはならないわけではなく、「公的書類等から確認した内容」が控えられていれば差し支えありません。
なお、「誓約書によることとなった理由」(公的書類等を提出・提示できない理由及び日雇派遣原則禁止の例外要件のいずれに該当するのかを聴取した記録)については、事後のトラブルを未然に防止するためにも、派遣元管理台帳と合わせて管理しておくことが望ましいとされています。
今後の日雇派遣の採用、配属等の雇用管理の一環として、「誓約書によることとなった理由」を適切に記録、保管していくことが大切です。